「50代で転職なんて、もう遅いんじゃないか」
退職届を出すまで、何度そう思ったかわかりません。
パソコンの前で求人サイトを開いては閉じて、また開いて。
何ヶ月もそれを繰り返していました。
退職金のこと。
年齢のこと。
「逃げてるだけなんじゃないのか」という自分への問い。
不安で押しつぶされそうになる日もありました。
それでも、私は転職しました。
今、あの時の決断を振り返って思うこと。
後悔していることも、救われたことも。
50代で転職を考えているあなたに、正直にお伝えしたいと思います。
なぜ50代で転職を決意したのか
転職を考え始めたのは、看護師として働く中で、体力面と収入面の不安が大きくなってきたからでした。
夜勤明けの疲れが翌日になっても抜けない。
若い頃は平気だったのに、50代になってからは明らかに違いました。
夜勤で心身消耗しているのに、給料は高いとは言えない。
労力と収入が見合っていない、と感じるようになっていました。
それだけではありませんでした。
職場の人間関係。
年々増えていく業務量。
一つ一つは小さなことでも、」積み重なると
「もう限界かもしれない」という気持ちになっていったのです。
それでも、なかなか動けませんでした。
「今の職場を辞めたら、退職金が減るんじゃないか」
「50代を雇ってくれる病院なんてあるんだろうか」
「これって、ただ逃げてるだけなんじゃないか」
そんな思いがグルグルと、頭の中を回り続けました。
求人サイトに登録したのは、転職を考え始めてからすぐのことでした。
けれど実際に応募したのは1年後。
退職を伝えたのは、さらに3ヶ月後。
動き出すまでの時間は、不安との葛藤でいっぱいでした。
転職前に抱えていた不安

退職金が減ることへの恐怖
当時の職場には、気が付けば20年以上勤めていました。
あと数年頑張れば、退職金はもう少し増える。
そのことが頭から離れませんでした。
試算してみたら、あと3年で約100万円違うことがわかりました。
100万円。
老後資金を考えれば、決して小さくない金額です。
「この100万円を捨てて、本当にいいのか?」
何度も自問自答しました。
本当に需要があるのかという不安
求人サイトには「年齢不問」「50代歓迎」と書いてあります。
でも、本当にそうなのか。
正直、半信半疑でした。
若い人の方が欲しいに決まっている。
そう思っていました。
実際に応募した病院は3つ。
療養病棟中心の病院。
老健施設。
地方都市の中核病院。
面接に進めたのは2つ。
「やっぱり50代は厳しいんだ」と少し落ち込みました。
それでも最終的には、2つとも内定をいただけました。
思っていたより、必要としてもらえたのかもしれません。
50代看護師の需要は、思っていたよりありました。
「逃げ」なのではないかという葛藤
これが一番辛かったかもしれません。
「夜勤が辛いから辞める」
「人間関係が嫌だから辞める」
そう口にすると、まるで自分が怠けているような、弱い人間のように感じました。
「もっと頑張れるはずなのに」
「みんな我慢してるのに、自分だけ」
という思いが消えませんでした。
今になって思えば、それは「逃げ」ではなく「選択」だったのですが、
当時の私は、そう思える余裕がありませんでした。
転職して後悔したこと3つ
正直に言います。転職して後悔していることもあります。
1. 退職金は確実に減った
やはり、これは事実として受け止めなければならないことでした。
前の職場であと3年働いていれば、約100万円多く退職金がもらえたはずです。
新しい職場での退職金は、もちろんゼロからのスタートです。
老後資金を改めて計算し直した時、この差は決して小さくありませんでした。
ただ、今はこれを
「今の健康と精神面での解放を引き換えにした100万円」
だと思うようにしています。
あのまま無理を続けて体を壊していたら、
医療費でもっと大きな出費に、なっていたかもしれません。
2. 新しい環境に慣れるのは想像以上に大変だった
20年以上同じ職場にいたので、全てが当たり前になっていました。
新しい職場では、物品の場所から、電子カルテの操作、業務の流れ、暗黙のルール。
全てを一から覚え直す必要がありました。
50代になった今の記憶力では、正直キツイと思う場面も多かったです。
「前の職場ならこうだったのに」と思うことも何度もありました。
新人のように質問するのも、プライドが邪魔をして辛い時がありました。
最初の3ヶ月は、毎日家に帰ってから
「本当にこれで良かったのか」
と自分に問いかけていました。
3. ボーナスが下がった(直近のボーナスが無かった)
給料が下がることは覚悟していましたが、実際に給与明細を見ると、やはりショックでした。
入職後数ヶ月は夜勤手当がなく、基本給も若干下がりました。
月に約3万円のマイナス。
年間にすると約40万円です。
家計の見直しはまだまだ必要でした。
スマホを格安SIMに変える。
保険を見直す。
今振り返れば良い見直しの機会でしたが、当時はかなり焦りました。
それでも転職してよかったこと3つ
後悔もありますが、それを上回る「救われたこと」が、確かにありました。
1. 体が楽になった
これが何より大きかったです。
夜勤はありますが以前のような慌ただしさは無く定時に上がれます。
急性期対応がないため、精神的にも余裕があります。
そして何より朝起きた時の体が軽い。
前の職場では、夜勤明けの日は1日中寝ていました。
次の出勤日まで疲れが取れないこともありました。
それが当たり前だと思っていたのですが、実はそうではありませんでした。
今は、仕事が終わって家に帰っても、夕飯を作る元気があります。
休みの日に出かける気力もあります。
「あぁ、これが普通の生活なんだ」と思いました。
2. 心に余裕ができた
前の職場では、いつもピリピリしていました。
スタッフ不足で常に忙しく、ミスが許されない緊張感。
人間関係のストレス。
帰宅してからも、
「あの対応で良かったのか」
「忘れていることはないか」
「明日は大丈夫か」
と仕事のことを考えてしまう日々でした。
新しい職場は、完璧ではありません。
でも、少なくとも「心理的に安全」だと感じられます。
失敗しても、フォローし合える雰囲気。
年齢を尊重してくれる雰囲気。
「ベテランなんだから、無理しないでね」
と声をかけてくれる上司。
この違いは、お金では買えないものでした。
3. 自分の人生を取り戻せた
これが一番大きかったかもしれません。
前の職場では、人生が「仕事のため」に回っていました。
休みの日も、次の夜勤のために体力を温存する。
趣味を楽しむ余裕もない。
友達との約束も、なかなか入れらませんでした。
今は違います。
週末に友人とランチに行ける。
習い事を始めた。
FPの勉強をする時間も、作れるようになりました。
「50代の人生、まだまだこれからなんだ」
そう思えるようになったことが、何より嬉しい変化でした。
給料より大切だったもの

転職して半年経った頃、前の職場の同僚に会いました。
「新しい職場、大変じゃない?」
と聞かれ少し考えてから答えました。
確かに、気疲れはあります。
退職金も基本給も減りました。
数字だけ見れば、損をしています。
それでも、私はこう答えました。
「大変だけど、それでも良かったと思ってる」
お金も大切です。
でも、健康と心の平穏はもっと大切でした。
前の職場で働き続けていたら、退職金はもう少し高かったかもしれません。
でも、自分を守ることはできなかったと思います。
心が折れていたかもしれません。
そして何より、「自分の人生を生きている」
という実感はきっと持てなかったと思います。
今は、給料が下がった分、無駄遣いが減りました。
お金の管理も真剣に考えるようになりました。
それも含めて
今の選択は私にとって、悪いことではありませんでした。
50代の転職で大切にすべきこと
私の経験から、50代で転職を考えている方に伝えたいことがあります。
完璧な転職先はない
新しい職場にも、不満はあります。
給料は下がったし、新しく覚えることも多い。
それでも、「前の職場よりマシ」と思える部分があれば、
それで十分だと私は感じています。
全てが理想通りの職場なんて、ありません。
50代の転職では「何を我慢できて、何を我慢できないか」を
自分なりに整理しておくことが大切だと思います。
何を優先するか明確にする
私の場合は「体力的な負担を減らすこと」が最優先でした。
だから、給料が下がることは受け入れられました。
人によっては、給料が最優先かもしれません。
人間関係かもしれません。
通勤時間かもしれません。
何を一番大切にしたいのか。
譲れない物はなんなのか。
それを自分の中で、はっきりさせておくことが後悔しない転職につながると今は感じています。
給料が下がることが必ずしも「不幸」ではありません。
反対に「無理を続けること」が将来の医療費や、心の負担につながる場合があります。
「逃げ」ではなく「選択」
転職は逃げではありません。
自分の人生をより良くするための、ひとつの選択です。
「もう限界かもしれない」
と感じているなら、それは体と心が出している大切なサインだと思います。
無理を続けて、壊れてしまってからでは、選べる道は一気に狭くなってしまいます。
50代の転職は、決して遅くありません。
むしろ、これからの人生をどう生きたいかを考えた
ごく自然な決断だと今は感じています。
一人で悩まない
私は転職サイトに登録し、アドバイザーの方に相談しました。
客観的な意見をもらえたことで、自分ひとりでは気づかなかった選択肢が見えてきました。
家族にも正直に話しました。
最初は心配されましたが、最終的には応援してくれました。
すべてを一人で抱え込まなくてもいいと思います。
誰かに話すことで気持ちが整理され
前向きに考えられることもあります。
自分に合った職場と出会うための第一歩は
「一人で悩まないこと」なのかもしれません。
まとめ : あなたの人生はあなたのもの
50代での転職。
不安でした。
退職金のこと、年齢のこと、「逃げ」じゃないかという葛藤。
すべてありました。
それでも、私は転職してよかったと思っています。
給料は下がりました。
退職金も減りました。
その代わりに健康を取り戻しました。
心の余裕を手に入れました。
そして、自分の人生を生きている実感を得られました。
お金は大切です。
でも、それだけが全てじゃありません。
もし今、転職を迷っているなら。
不安なのも「このままでいいのか」という気持ちの方が強いなら、
それは動くべきタイミングなのかもしれません。
50代の人生は、まだまだこれからです。
あなたの人生は、あなたのものです。
誰かのためでも、世間体のためでもなく、あなた自身のために、選択していい。
この経験が、あなたの背中をそっと押すきっかけになれば嬉しいです。
※この記事は私個人の体験に基づいています。転職を検討される際は、ご自身の状況に合わせて慎重にご判断ください。